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「死にがたり」 作者と出演者による大反省会・セルフツッコミ

吉良(以下、吉)「いやー終わった終わった。出演者の皆さん、お疲れでーす」

高橋(高)「全くです」

武藤(武)「ひでぇ話だったな、いろいろと」

愛「出番少なかったー」

熊谷(熊)「……!(力をためている)」

舞「貴公には言いたいことがたっぷりある…」ゴゴゴゴゴゴゴ

日向(日)「舞さん!?なんですかその強そうな口調!?」

大学生(大)「あの…僕、用事があるんですけど…」

吉「なんというカオス。名前がないと誰の発言かも区別できないね」

吉「まぁともかく、今回の記事は大反省会。出演者の皆さんに順番で反省点を語ってもらいます」

吉「作者自身も、『こらアカン』と思う点が結構あったので、訪問者の皆さんに怒られる前に自分で裁いてやろう、というわけです」

武「なんだ、手前もチキンかよ」

愛「手羽先おいしいよね~」

吉「しゃらっぷ。いちいち発言されたら終わんないから。順番を待って」

一同「ぶーぶー」

吉「では早速、はじめましょう!」




「初回の俺がなんか変じゃねぇか?」

吉「ギクリ。わかりましたか」

武「そりゃ、自分のことだからなぁ。言葉づかいというか、性格というか、違和感あるだろ」

吉「そうなんです。まだ最初だったので武藤さんの設定もはっきり決まってなかったんです。『クールなお兄さん』にしようかとも迷っていたのですよ」

武「結局、クールな中年になったってわけか」

吉「高橋との会話の中で、なんとなく『あ、や○○にしよ』と決定してから、だいぶ固まりましたね」

武「そういえば、結局俺の仕事はアレでいいんだよな?」

吉「やのつく三文字です。カタカナで言えば、ジャパニーズマフィアですね」

武「へぇ、『やくざ』ってそういう風にいうのかよ」

吉「言っちゃったよ!明言を避けてたのに!」

吉「ま、まあともかく、武藤さんについても少し掘り下げるつもりだったのですが、結局うまくいかなかったですね。死んでからの年数をちゃんと覚えているのも、そういった目論見の名残です」

武「そもそも、なんで輪廻してねぇのか曖昧だもんな。しっかり初志貫徹しろよ作者」

吉「申し訳ない。ということで武藤さん!最後に一言!」

「ねばねばには気をつけろよ!」

吉「ありがとうございましたー!」



「私の死に方って具体的にどう酷かったの?」

吉「…具体的に?」

愛「そう。私修羅場好きなんだから、自分の修羅場だって詳しく知りたいじゃな~い?」

吉「…神経太いですね」

愛「普通よ、ふつー」

吉「正直に言って、決めていません」

愛「えーなにそれー!超がっかりー」

吉「僕自身、そういうえげつなさそうな話は苦手なんですよね、実は。裏切ったり喧嘩したりとか。だからそういう詳しい描写は避けています」

愛「描写するだけの表現力が足りなかったくせにー」

吉「しゃらっぷ。ちなみに、愛さん達が話している場所は、駅前のスタバ二階をイメージしています。一回も行ったことはないですが」

愛「ほら、描写力が足りないからここで説明してるー」

吉「やっかましい。ついでに愛さんのモデルとしては、某オネエ芸人さんを参考にしています。というか、セリフも全部あの声で再生してました、僕の脳内で」

愛「名前もまんまだしね~」

吉「さて、愛さんありがとうございました!最後に一言!」

「修羅場もいいけど濡れ場もね!」

吉「なんてこと言ってんですか!」



「何故、輪廻出来ていない!?」

吉「わあ!びっくりした!ほかの人よりフォントがでかいですよ!」

熊「チャージしていたからな。そんなことより貴様、俺のような漢らしいものが、すぱっと輪廻していないとは、おかしいだろう!」

吉「全くです。申し訳ない」

熊「…言い訳しないで、いいわけ?」

吉「正直、悪かったと思っています。熊谷さんは、一番最後にイメージが出来た人物だったんです。日向さんとか舞ちゃんのほうが早かったんですよね。話の都合上、『愛と合ってから誰かに会わせよう』と考えた結果、熊谷さんが登場したのです。だから、詳しい設定はしていなかったんです」

熊「…」

吉「自衛隊の知り合いなんていないし、『なんとなく軍隊の鬼軍曹っぽくしとこ』と思って決定されました。怪談好きなのは、付け焼刃の設定ですね」

熊「…」

吉「ちなみに熊谷さんの死因は、自衛隊の教え子が投げるのを失敗した手りゅう弾に覆いかぶさり、身を挺して守ったからです。想像してみると怖いですね~」

「ひげ面だって、酷いことを言われたら傷つくんだぞ!?」

吉「意外とナイーブ!?」

熊「そんな、手りゅう弾とか…血が出るじゃないか!」

吉「いやいや、血どころか、もっとヤバイものが」

「黙れぃ!」

ドッゴオオン

「へもっ!?」

「最後に一言!グロテスク、ダメ、絶対!以上!」

吉「シュワシュワシュワ(口から霊魂出てる)」




「唐突すぎるであろう、我の出現と伏線が」ゴゴゴゴゴゴ

吉「…どこの魔王様ですか?」

舞「ふっ、我の真の姿に恐れをなしたか」ゴゴゴゴゴゴゴ

吉「…ああ、これが噂の中2病ですね」

舞「やかましい。話を聞け」

吉「仰った通り。最大の問題点はそれです。痛いほどわかっているのです。『伏線が浅すぎる』って!」

舞「分かっていたのなら、改良すればよかったではないか」

吉「いやね、もう話の大筋が決まって、登場人物もそろった後だったんですよ」

舞「ほほう」

吉「そこからエピソードを継ぎ足したり、話を前後させたりなんて、面倒で出来ませんでした!サーセン!」

舞「貴公、そんな軽い謝罪で許されると思っているのか!!」ドゴゴゴゴゴゴゴゴ

「許されぬこととは、もとより覚悟の上よ!!」ズゴゴゴゴゴゴゴゴ

「!?貴公からにじみ出るその力は…!?もしや貴公が封印されし…!」 ドゴゴゴゴゴゴゴゴゴ

「ふっ、喋ってないでかかってきたらどうだ!どちらが正しいかは戦いで決めよう!!」ズゴゴゴゴゴゴゴゴ

「ふははは!面白い!我の全霊をもって粉砕してやろう!」ドゴゴゴゴゴゴゴ!

「最後に一言ォ!!」ズゴゴゴゴゴゴゴ!

「我の力が作者を滅ぼすと信じて!」ドゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ!

応援ありがとうございました!!  吉良 瀬々等先生の次回作にご期待ください!!



「なんだったんですか、さっきの?」

吉「ただのワルノリです。気になさらず」

日「そうですか。ところで、反省点ですが」

吉「はい」

「私の設定をもっと生かすべきだったのでは?」

吉「ああ、確かに」

日「サムライの幽霊なんだから、もっとそれに絡めればよかったとは思うのです」

吉「う~ん、わかってはいたのですが…」

日「何か問題でも?」

吉「幕末頃の詳しい知識がなかったんですよね。『元治』だって、wikiで調べて書いたぐらいで。服装とか言葉遣いとかも全然知らなかったですし。だからあまり『昔の人』という点を押すと、ぼろが出そうで怖かったんですよ」

日「調べながらでも書けばよかったのでは?」

吉「面倒じゃないですか~」

日「…やれやれ、あきれた作者です。刀の錆にでもしましょうか」

吉「さっきからこんなことばっかり。僕もう眠いんですから、手早く終わらせますよ」

日「仕方ないですね」

吉「同じ口調のセリフが続くと眠くなるんですよね~、ネタも思いつかずすみません。最後に一言」

「図書館をもっと使いましょう!借りるよりも、その場で読むのがベストです!」

吉「ありがとうございましたー」



「僕のドモリがひどいです」

吉「え、そう?」

高「そうですよ。武藤さんとか熊谷さんとかに脅されたり、戸惑ったりするたびに『あ、あの』とかばっかり続きましたよ?」

吉「ばれたのなら仕方ない。途中でそう思いはしたんですよ。ただね、怖がってたり戸惑ってたりするのを会話文で表現しようと思うと、この書き方が一番楽なんですよ。一種の記号ですね」

高「それにしても多かったですよ」

吉「チキンな性格が災いしましたね。ちなみに、高橋さんのような『臆病流され型』の主人公だと、周りの人に流されて無茶なことにつきあったりさせれそうで、使いやすそうですね」

高「似たような主人公ばかりだと飽きますよ?」

吉「わ、わかってます!ちょっと思っただけです!最後に一言!」

「約束忘れたら駄目ですよ!」

吉「全くだ!ありがとうございましたー!」



「僕の将来が心配です」

吉「ああ、作中唯一の生きてる人。いたんですか?」

大「何気なくダメージ与えてきますね。それで、僕の将来大丈夫ですか?」

吉「僕にキカレテモナー」

大「…なんか、扱い雑ですよね?」

吉「だってさー、付け加えるかどうか迷ったエピローグにちょっと出るだけの、名もなき大学生が相手だとさー、やる気がなー」

大「…」

吉「さて、最後に一言。何かあったら」

「休日を返せ!」

吉「おつかれー」



さて、全員分の反省会が終わりました。
思い返して一番の問題が、やっぱり舞の伏線問題でした。
さっき登場して次にはネタバレ。はやっ!
まぁ、改良はしないのですが。一度流れが決まってしまうと、変えるのが大変なんです。
作者的には、「どこかで見たことある流れだなぁ」との思いが常にしていたのですが、今回はすべて無視しました。気にしてたら終わんないですからね。

今回の話の感じだと、いろいろ『外伝』みたいな感じで話を拡張することもできそうですね。武藤さんにあちこち歩かせたり、高橋と舞の生きてる頃の話を書いたり。まあ、まず書かないでしょうが。

会話文ばかりなのも問題かもなー。僕の脳内では情景も一緒に写ってるんで完璧なんですが。


さて、ここらでお開きです。こんなところまで読んでくれて、本当にありがとうございました。
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連載小説 「死にがたり」 その∞(誤記ではない)  エピローグ

「死にがたり」 その∞(誤記ではない)である   その7はこちら →  その7

話はこれで終了





∞   夏 明け方


空が白んでいるのを見て、私はため息を吐いた。今日もまた暑い日が始まる。結局、一睡も出来ないまま朝になってしまった。
それもこれも、目の前のこの幽霊のせいだ。

「ん、どうしたアンタ?俺を睨んでるように見えるぞ?」

「睨んでるですよ。あなたが一晩中話すから、朝になっちゃったじゃないですか」

「あ~、夏は夜が短いからな、気にすんな。別にいいだろ、長い休みを持て余した大学生なんだから」

軽く受け流されたが、夏休みを持て余しているのも事実だったので、反論できない。

「それにしても、あなたが急に現れたと思ったら、『アンタはいいから、黙って話を聞け』なんて言ってからの長話ですよ。無茶苦茶じゃないですか」

「いやぁ、わりぃわりぃ。俺たちの姿がしっかり見える、初めての生きた人間だったからよ。ついいろいろ話したくなっちまったんだよ」

「はぁ、だからって一晩中話さなくてもいいでしょうに。私は疲れるんですよ」

「そうだったな。だがな、そんなこと言ってるとこれからが思いやられっぞ?」

含みのある言い方に、凄く嫌な予感がする。

「…なんでですか?」

「そりゃ、これからは頻繁に幽霊が訪れるようになるんだからな。俺がアンタのことを他の奴に広めて回るし」

「ちょ!?止めてくださいよそんなこと!私の都合だってあるんですよ!?」

「だーいじょうぶだって、平日は邪魔しねぇようにしっかり釘刺しとくから」

「土日祝日はどうなるんですか!?」

「幽霊漬けだな」

頭が痛くなってきた。前からたまに霊が見えることがあったが、これからは頻繁に来るとか。

「…それで、私のところに来て、幽霊の皆さんはどうするんですか?」

「何って、そりゃ、話すんだよ。話したいことを」

「あなたみたいに!?」

「あー、別に俺みたいに長話するやつばかりじゃねぇと思うぞ。幽霊やってっと、生きてる奴に伝えたいこともあるんだよ」

「はぁ、なるほど…まぁ話を少し聞くだけだったら、いいですよ。いろいろ珍しいことも聞けそうですし」

「ありがとな!ちなみに、さっき話した『センセェ』も来ると思うけど、あの人もきっと話長いぞ?しかも『いつか口述筆記してほしい』なんて言ってたからな」

「こっ!?100年以上幽霊だった人の体験を全部!?」

「全部かどうかは知らねぇけどな。まぁ、気張っていけや。センセェも誰かに伝えたくて輪廻する決心がつかなかったらしいからな。人の悩みを解決できるんだぜ、しかも出来るのはアンタだけだ。立派な仕事じゃねぇか」

無責任に言われ、頭どころかお腹が痛くなってきた。ストレス性の胃炎だろう、多分。

「じゃあ、俺はそろそろ行くわ。ちゃんと寝ろよ、アンタ」

「誰のせいですか。…あ、ちょっと待ってください」

「ん?」

立ち去ろうとした幽霊を呼び止めて、疑問だったことを聞く。

「さっきの話ですけど、結局『高橋』という幽霊と『舞』っていう幽霊は輪廻できたんですか?」

「ん~、どうだろうな」

「知ってるんでしょう?」

「まぁ、こういう話は最後まですると野暮ってもんだ。アンタの想像に任せるぜ」

「…まあいいです。それと、この一晩中喋った話、いったいどうすればいいんですか?」

「どうって、別に聞くだけで良かったんだけどよ。なんだったら、小説にでもしたらどうだ」

「小説?」

「タイトルはシンプルに、死んだ奴の物語だから、『死にがたり』とかつけてな」

「そんなの売れないですよ」





「死にがたり」終了である。ここまで読んでくれた方、ありがとうございました。

連載小説 「死にがたり」 その7

「死にがたり」 その7である その0(誤記じゃない)はこちら  その0

うまく切れなかったから今回は長めである




7  冬 昼下がり


センセェが話し終わっても、俺たちは無言だった。何をしゃべっていいのかもわからねぇ。隣の高橋を見るが、その眼はどこも見ちゃいなかった。

「同姓の別人かもしれない、とは思ったのですが、あの少女と私の縁のように、もしかしたらこれも縁なのかと思って、お話しました。どうですか、高橋さん」

「…思い出しました」

「おお、ということはやはり、あなたが!」

「…マジかよ、アンタ」

「どうして、なんで思い出せなかったんだよ…!あんなに、大事な友達だったのに!?」

「落ち着いて下さい高橋さん。あの少女が死んでから15年が経っています。いなくなってしまった人を忘れてしまうのは、生きるのに必要なことです。自分を責めることはありません。今は、その子のことを思い出せれただけで十分です。大丈夫です」

「全然大丈夫じゃないですよ!!僕は、僕は…あの子に…!!」

血を吐くような高橋の声に、硬直していた俺の思考も動き出した。

「ちょ、ちょっと待てよアンタ!あの新幹線の中の子は、舞って言ってなかったか!?」

「…なんですって?」

「僕は、さっき舞ちゃんに会ってるんです!たくさん喋って、僕に笑いかけてくれてたのに、僕は思い出すこともなく…!」

高橋が弱弱しく顔を下げる。

泣いてやがる。
涙は出てなくても泣いていると、俺は分かった。

「泣くんじゃない!!」

「「!!」」

急に張り上げた怒声に驚き、俺たちはセンセェの顔を見る。怒っている。椅子から立ち上がり、高橋の顔を真正面から見つめ、センセェは怒っていた。

「今は泣く時ではないでしょう!酷いことをしたのなら、会って謝るだけです!!舞さんとはどこで別れましたか」

「ひ、日向さん…」

「どこで!」

「センセェ、新幹線の中でだ!ここまで一緒に乗ってきたんだが、降りずにそのまま戻っちまった!」

「分かりました。行きますよ!」

そういうとセンセェは急に走りだし、図書館を飛び出していった。あんなに素早いセンセェを見るのは初めてだ。

「ちょ、待ってくれよセンセェ!行くぞアンタ!走れ!」

「え、あ、」

「黙って走れ!」

高橋を追い立てるようにしつつ、俺たちもセンセェを追って走り出した。



肉体のないまま走るのは奇妙な感覚だった。呼吸はあがらず疲れないまま早く移動できるのだが、動いている実感がないから焦りばかりが強くなる。
いつまでも追いつかねぇんじゃないかと不安になったところで、センセェの後姿を見つけたからほっとした。

「高橋、こっちだ!」

律儀に歩道を走っていくセンセェに追いつこうと、曲がり角にあったファミレスを一気にすり抜ける。外壁を抜けたところで、センセェの背中の真後ろにつけた。高橋も遅れずについてくる。

「センセェ、今、駅に向かってんだよな!?」

「ええ、新幹線に乗って帰ってしまったのなら、それに乗って追いかけるだけです」

「でも日向さん!もう何時間も前なんですよ!?」

「それがなんです?舞さんはずっと貴方を待っていた。いつ来るかもわからない友達との約束を守るため、15年も」

「あ…」

「今日会えなくても、明日会えなくても、貴方は舞さんを探し続けるべきです。それが義というものでしょう!」

「…センセェ、こう言っちゃなんだが、この場面で『義』とかの堅っ苦しい言葉はあわねぇと思うぜ」

「じゃあ、なんて言えばいいんです!?」

「そりゃあ……『愛』、とかじゃねえか?」

「「ふざけないでください!」」

「…」

二人に同時に怒られた。真面目に言ったつもりだったんだけどなぁ。
と、駅が視界に入った。もう少しだ。


ホームの電光掲示板をみると、ちょうど5分ぐらいで下りの便が到着し、それがまた折り返して上りになるらしい。
センセェは腕を組んで、高橋は時計と新幹線の来る方向を交互に見ながら待っている。

「…おそらく、高橋さんの無意識が舞さんとの約束を覚えていて、それが輪廻するのを食い止めていたのではないでしょうか」

センセェがぼそりと喋り出した。

「それに、昔から『言霊』というものがあるとも言われています。口に出した言葉はそれ自体が意味を持ち、約束は人と人を結びつけ、絆を作る。その繋がりのおかげかも知れません」

高橋は黙って頷くだけだ。

「…私が一番恐れているのは、『忘れられてしまった』と舞さんが衝撃を受け、そのまま消えるように輪廻してしまうのではないか、ということです。その前に会えればいいのですが」

「お、おいおいセンセェ、縁起でもないこと言うなよ!」

「輪廻自体は喜ばしいことです。新しい人生を迎えられることは。ただ、悲嘆にくれたまま今の意識を終えるなんて、悲しいことです。…そう考えると、私の感傷だけの問題なのかも知れませんが」

「そんなことないですよ!日向さんが教えてくれなかったら、僕はまだ舞ちゃんのことを思い出せてなかったんですから!感謝してます!」

「感謝は、貴方と舞さんがちゃんと再会できてからです」

と、線路の先から白い車体が見えた。

「高橋さん。あちらに着いたら、舞さんが行きそうなところを全部探しますよ。諦めては駄目ですからね」

「分かりました」

「武藤さん。悪いですが、高橋さんを手伝ってもらえませんか?高橋さんはまだこちらに来たばかりで大変でしょうし、顔の広い貴方なら知り合いに聞くこともできるかも知れません」

「まぁ、乗りかかった船だからな。別にやることもないし、付き合ってやるよ」

「ありがとうございます。私もついて行きますので、よろしくお願いします」

「え!?センセェもついてくんのかよ!?」

思わず声を大きくした。ほとんど図書館から動かなかったセンセェが、人探しのために外を歩き回るなんて考えてもいなかった。

「目は多いほうがいいでしょう。それに、14年前に助けられたのは私ですからね」

車体がゆっくりと停止する。行列の一番前の奴より一歩前に出て、ドアが開くのを待つ。

「行きますよ」「はい」「よっしゃ、行ってみっか!」

ドアが開く。




「あれ?高橋君?と、武藤おじさんと先生も」

勢い込む俺たちを迎えたのは、当の嬢ちゃんだった。

「あ!?」「嬢ちゃんじゃねぇか!」「舞さん!?」

「ちょ、ちょっと、そんなにみんなで驚かなくても…いったいどうしたの?」

「あ…ああ…」

何か言おうと高橋の口が開きかけるが、結局また閉じられる。

「どうしたも何も、今から嬢ちゃんを探しに行くとこだったんだよ」

「舞さん、よかった…また会えて…!」

「…うーん、とりあえずもっと広いところに行こうよ。ここだと乗り降りする人が多いし」

嬢ちゃんに先導され、俺たちはぞろぞろとホームのほうへと戻った。


「はぁ~、そういうことだったんですねぇ」

結局、駅の近くにあまり落ち着けるところもなく、俺たちは図書館まで戻っていた。
4人で机を挟みながら、話を聞いた嬢ちゃんが納得したようにうなずいている。

「降りようとしたら、三人も知り合いの幽霊が待っているんだもん。びっくりしちゃいました」

「で、嬢ちゃんはどうしてまたこっちに来たんだ?」

「ああ、それは、あの…」

一瞬迷ったようだが、嬢ちゃんは話し出した。

「高橋君にすっかり忘れられてるってわかった時に、確かにショックだったんです。それで、つい高橋君から離れようと思って、そのままあっちに戻ろうとしちゃったんです」

「混乱の元から距離を取ろうとする心理はわかります。高橋さんに失望した、という面もあったかもしれませんが」

「うう、ゴメンね舞ちゃん…」

「落ち込まないで。それに先生、別に私は高橋君に失望してません。私だって最初は、高橋君が私の探してる高橋君かっていう自信はなかったんです、勘だけで。見た目も違ってたし」

しっかりと答える嬢ちゃんを見ながら、そういや嬢ちゃんもセンセェのことを先生と呼ぶんだと、俺は気付いた。

「そりゃ、15年経ってんだもんなぁ。鼻水たらしたガキだって、見た目だけは立派な社会人にもなるしな。中身は変わんなくてもよ」

「僕は中身だって大人になってますよ」

「そこですぐ反論してくんのがガキだってんだ。男だったらどっしり構えて黙ってろよ」

「黙ってたら武藤さんの言いたい放題じゃないですか」

「それで、どうやって高橋さんが、探していた高橋さんだって確信したんです?」

「納豆ととろろとオクラの生卵がけゴハン」

「ぐぇ!?」

「…なんて声出してるんですか、武藤さん」

「すまねぇセンセェ、不意打ちでとんでもねぇ単語が聞こえたから」

「高橋君が昔言ってた好物だったんです。それをこっそり聞いてみて。それに、昔から高橋君は怖がりで、チキンだったし。ふふっ」

「酷いっ」

「なるほどな。嬢ちゃん賢いなぁ。それにしても気づいたんなら言ってやりゃ良かったのに。『私があの舞ですよ』って」

「高橋さんに自分で思い出して欲しかった…そうでしょう?」

「そうなんです。それで終点に着くまで一緒にいたんだけど、思い出してくれなくて…」

「ご、ごめんよぉ」

「大丈夫だって。それであっちに戻る途中に冷静になって、『忘れちゃったなら、思い出して貰うまで付きまとわないと!』って気づいて、慌ててまたこっちに来たんです」

「やっぱり、根性入ってんなぁ嬢ちゃん。ちょっと分けてもらえよ高橋」

「余計なお世話です」

「どうやら、これでようやく納得いきましたね」

センセェがその場を締めくくるように言う。そして高橋と嬢ちゃんを見て、微笑む。

「なにはともあれ、再会おめでとう。高橋さん、舞さんに言うことがあるのでは?」

「あ…そうですね」

高橋も背筋を伸ばし、嬢ちゃんのほうに向き直る。

「…舞ちゃん、待っててくれてありがとう。それから、忘れちゃっててゴメン」

「くすっ。いいよ、高橋君。思い出してくれたんだし。また会えてうれしいよ」

「やんややんや。あっさり再会できて良かったじゃねぇか。ちょっと拍子抜けだけどな」

「武藤さんのおかげでもあるんですよ。高橋さんをこっちに連れてこようとしなかったら、二人は会えなかったでしょうし」

「よしてくれよセンセェ、ただの偶然だって」

「ありがとうございます、武藤さん」

「ありがとね、おじさん」

「だーかーら、やめろって」

居心地が悪くなってそっぽを向く。不良中年を褒めるんじゃねぇよ。

「さて、どうしますか、高橋さんに舞さん?生きてた頃の話と、こっちで見た話と、互いに積もる話もあるでしょう?」

「そうですねぇ、どうする?舞ちゃん」

「うーん。先生、しばらくこの図書館にいていい?ここって居心地いいし、静かでおしゃべりがしやすいから」

「それはそれは。もちろん私は歓迎しますよ。お二人の話も聞いてみたいですし」

いつも静かなのが好きだったセンセェも、少しも嫌がらねぇ。それどころか、満面の笑みまで浮かべちまってる。意外と人に飢えていたのかもしれねぇな、と俺は改めて思った。

「やれやれ、どうやら話も収まったみてぇだし、俺もそろそろ行くわ」

「え!?行っちゃうんですか!?」

「そりゃアンタ、これから15年分の話を始めるんだろ?どれだけ時間がかかるか分かったもんじゃねぇよ。それに熊谷には『そんなにかからねぇ』って言っちまったしな。そろそろ潮時だ」

「そんな~、武藤さんの話も聞かせて下さいよ。八百屋さんだった頃の話とか」

「本気で八百屋だと思ってたのかよ!?…いや、いい。『死ぬ時も一人なんだから、死んでからも一人のほうがいい』って前に言ったしな。別にアンタらは二人でも三人でも好きにすりゃいいが」

「行ってしまうのですか?」

「悪いなセンセェ。急にやってきて、やかましい奴を二人置いていくことになるが」

「別に気にしていません。ただ、どうせやかましいなら、二人も三人も変わりませんよ」

「おじさん、おしゃべりは人数が多いほうが楽しいよ」

「嬢ちゃんにまで言われてもなぁ」

「今日だけでいいから!また明日あっちに戻ればいいよ」

「武藤さん、髭面の自衛隊教官との約束と、かわいらしい女の子の頼みと、どっちを取るんです?」

「そりゃ…女の子だろう。もうちょっと大きい姉ちゃんの頼みだったら尚よかったんだが」

「なら、今日はここでおしゃべりしましょう。決定です」

「ありがとね、おじさん」

「四人でやかましく過ごしましょう、たまには」

「おいおい」

呆れつつ文句を言いかけるが、やめる。まぁ、たまには、いいか。しょーがねぇなぁ。
結局、俺はまた黙って席に座った。三人は早速しゃべり始めている。
窓から外を見ると、夕日がゆっくり沈んでいくのが見えた。夜が来る。だが、また朝も来るだろう。毎日変わらず飽きないこった。




今回はここまでである。あと少しだけエピローグ的なものがあるのである。

連載小説 「死にがたり」  その0

「死にがたり」  その0である。誤記ではない。その6はこちら→   その6





0  過去


14年前のあの日、私は消えてしまいたかったのです。


その日は今日のような冬の日でした。強い木枯らしが窓を振るわせ、この冬一番の寒さになると司書の人たちが話していたのを覚えています。

消えてしまいたかった、といっても、なにかあったというほどでもありません。
ただいつものように、閲覧者の後ろから本を覗きこんで読んでいました。

そのとき誰の後ろにいたのかは覚えていませんが、何を読んでいたのかは覚えています。オーヘンリーの短編集。話は「最後の一葉」でした。
…ハハ。チョンマゲを乗せた武士の口から『オーヘンリー』なんて聞くとは思わなかったでしょう?こう見えて、外国の作家も知っているんですよ。

話をもどしましょう。「最後の一葉」を簡単に説明しますと、ある病人が窓から外を見ていて「あの壁のツタの葉が全部散る時、私は死ぬ」と言って悲嘆にくれるのです。
その後、何日も嵐の日が続き多くの葉が散りますが、なぜか一枚の葉だけいつまでも残り、それを見ていた病人が生きる気力を取り戻していきます。実はその最後の葉は、病人が弱気になりそんなことを言っている、と知った老いた画家が壁に描いた絵だったのです。結局その画家は、嵐の中で絵を描いたことがもとで体を壊して死ぬのですが、病人は完全に回復することができた、という話なのです。
…つまらなそうな顔ですね武藤さん。『両方生きてたほうが良かったのに、どうしてジジイは死んじまうんだよ』って言いたそうですね。気持ちはわかりますが、本題はそこじゃないですよ?

さて、その話を肩越しに読んでいた私がふと窓の外をみると、街路樹が見えました。木はほとんど裸になっていましたが、よくみると一枚だけ、残っている葉がありました。
そうです、「最後の一葉」だったのです。単なる偶然だったのですが、私は妙に喜んでしまい、私の前で本を読み続ける人に教えようと肩に手を伸ばしました。

私の手はその人の肩をすり抜けました。

そのとき、私の中で殺し続けてきたむなしさが溢れました。
私は何一つ世界に関わることができない、「ただいるだけ」の存在であると、痛感したのです。
激動の時代に倒れ、その行く末を見たいと願った若者の幽霊は、いつしか、ただ知識をため込むことだけを目的にし、無為に漂うだけの「なにか」になっていると、認めざるを得ませんでした。
そしてそれが分かっていても尚、これまでため込んだ「自分自身」を手放すのを恐れ、輪廻する勇気もないまま漂い続けるだろう未来を想像し、絶望しました。
消え去りたい。完全に消えてしまいたい。誰にも届かないとわかりながら、私は絶叫していました。


そのときに、彼女と出会ったのです。
「おじさん、大丈夫?」と声を掛けられ振り向いた先には、まだ幼さの残る少女が立っていました。私と同じ幽霊であることは、すぐにわかりました。
「苦しそうな声が聞こえたから」と、少女は心配そうに言ってくれましたが、混乱していた当時の私は何も答えれず、ただ黙っているだけでした。
しばらく時間が経ち、冷静さを取り戻した私がお礼をいうと、安堵したように少女は笑ってくれました。

そのまま少女は、同じ図書館に居つきました。
なんで一緒にいるのか尋ねると、「ほっとけないでござる」と、時代劇のマネをしながら答えてくれました。
まれにほかの幽霊に会うことはあっても、ろくに会話もしないまま避けていた私でしたが、物怖じしない少女の積極さに影響され、少しずつ打ち解けていきました。
最初は、読めない漢字の読み方。次は、身の回りの様々な疑問。そして自分の生きてた頃の話までするようになりました。

少女は乗り物が大好きで、新幹線に乗って遠くの大都会からはるばる来たと話しました。
生きてた頃は病弱でほとんど病院から外へ出れなかったこと、結局病が悪化して死んでしまったことも話しました。
そして、病院で偶然出会った少年と友達になったことを嬉しそうに話してくれました。
少女がベッドでつまらなそうにしているところに見舞いに来ては、他愛無い話や冗談で盛り上がったそうです。好きな動物、好きな本、好きな食べ物、好きな乗り物の話題などなど。
時々ふたりで病室を抜け出して、屋上でひなたぼっこもしたそうですよ。
そして11歳のその日、いよいよ少女の命が消えかかる時に少年は「僕が死んだら、生きてた時にあったことを全部教えてあげるから、待っててね」と、涙で顔をぐしゃぐしゃにしながら言ったそうです。
少女のほうも、「先に行っていろいろ見とくから、君が来たら教えてあげるね」と、約束したそうです。

そしてその約束のために、少女は死んでからもあちこちに足を延ばしては、楽しいことや珍しいもの、出会った人を覚えて、少年に教えるために貯めているんだと、照れながら言ってくれました。私のこともその少年に話すんだと、言っていました。

しばらく図書館にいた後、少女はまた都会に帰りました。まだ少年は元気だろうけど、もしも死んでしまって迷子になったらいけないからと、冗談めかして言っていました。
そのころには、私のなかの泥のような思いも軽くなり、少女と笑って別れることができました。
「生きる希望」とはいえないですけど、確かに私はあの少女から希望を貰いました。
それから毎年少女は会いに来てくれるようになり、数年後には武藤さんとの出会いもあって、私は今を穏やかに過ごせています。

最後に、少年の名前は高橋、少女の名前は舞というそうです。おしまい。




今回はここまでである。正直タメが短かった気もするが、後の反省会に任せる

連載小説 「死にがたり」 その6

「死にがたり」  その6である。今回は若干短め。その5はこちら → その5




6  冬 昼


「…チョンマゲ、ですか」

「チョンマゲ、ですよ?」

センセエを前にした高橋が固まっている。そうそう、こんな顔が見れるんじゃねぇかと期待してたんだ。ずっと待ってたかいがあったぜ。

「おいおいアンタ、初対面の人間にいきなり言うセリフかそれが。しかもセンセェに向かってよぉ」

「あっ、すみません!つい気を取られてしまって」

「いえいえ、いいんですよ。珍しいものに気を取られるのは自然なことです。図書館に着物でチョンマゲの幽霊がいたら、誰だってそれらが気になりますから」

「おっとセンセェ、俺はそんなものに気を取られなかったぜ?」

「そうでしたね。武藤さんの場合は、私の腰を見て『おっ、長ドス!いや、ホントウじゃねぇか!?いい得物もってんなぁ兄ちゃん!』でしたね」

「へぇ~、全部覚えてんのか。流石だなセンセェ」

「長ドス?ホントウってなんですか?」

一人会話について来れない奴が首をひねってるが、どうでもいいので無視する。

「久しぶりですね、武藤さん。3年ぶりぐらいですか」

「そんくらいになるかな。時間の流れってやつは早えぇもんだなぁ。ここだっていつのまにか立派になったじゃねぇか。あんまり変わりすぎてて、見つけるのに苦労したぜ」

そういって俺はあたりを見渡す。
前に来たときはカビっぽく、壁にはヒビが入り、陰気な本の虫しかいそうになかった図書館が、大改装を経て立派なハコモノに生まれ変わっている。まぁ、相変わらず本の虫しかいねぇようだが。

「2年ほど前に工事があったんですよ。見違えるようになって、私も気に入っています。まぁ、工事が終わるまで居場所がなくなって苦労しましたが」

「センセェは出不精だからなぁ。たまにはあっちこち歩いてみりゃいいのに」

「私は静かなところが好きですからね。歩いて回るのは武藤さんに任せますよ」

「へへっ、確かにな。俺は動き回ってるほうがいいし、センセェは静かにしてるほうがセンセェらしい。人の天分って奴だな」

「あの~、武藤さん?ちょっと紹介してもらっていいですか?」

「ああ?さっき言っただろうが」

「教えてもらってないですよぅ」

「教えてあげてないですよ?」

あらら、センセェにまで言われちゃ仕方ねぇな。

「この人はセンセェ。見てのとおり、江戸時代のお侍だったんだぜ。まだ知り合って8年ぐらいだが、俺が知ってる中で一番頭が良くて一番長く生きてる幽霊なんだよ」

「はっはっは。生きてる幽霊とは、武藤さんの表現は相変わらずですね。ちなみに、江戸時代といっても幕末のころです。元治二年、西暦で言えば1865年に死にました」

「なっ!?すげえだろ?『元治二年』なんて言葉がパッと出てくるんだぜ?センセエはすげぇだろ!?」

「凄いのはわかりましたけど、どうして武藤さんが得意げなんですか」

「いいじゃねぇか、知り合いの凄さは俺の偉さなんだよ」

「む、無茶苦茶だ…」

「私なんて、武藤さんが言うほどのものではありませんよ。気軽に『日向』と呼んで下さい。私の名前ですので。ところで、あなたのお名前も教えてくれますか?」

「あ、はい。僕は高橋っていいます。よろしくお願いします」

「高橋さん…。ひょっとして、26歳で亡くなりましたか?」

「えっ!なんでわかったんですか?」

「すげぇなセンセェ。ついに超能力でも手に入れたのかよ」

「…いえ、背格好でそう思っただけですよ。私も26で死んでますから、なんとなく勘が働いたんでしょう」

「へぇえ、日向さんってまだ26歳だったんですか。とてもそうには見えませんね」

高橋の馴れなれしく能天気な声が、俺の癇に障る。

「当たり前だろ、センセェは100年以上生きてんだぜ?アンタなんかと比べれるわけねーよ。それよりアンタ、今センセェのことを軽々しく呼びやがったな、あぁん?」

「ひっ…」

「止めてください武藤さん。私が好きに呼んでいいと言ったんです。私の前で人を脅すのは許しません」

はっきりとした口調に、怒りが削がれる。一つ息を吐き、苛立ちを鎮める。

「分かったよ、センセェにはかなわねぇしな」

「ありがとうございます、それと、偉そうに言ってすみません」

「謝んなよ、わりぃのは俺なんだから。頭上げてくれセンセェ」

「す、すみません日向さん、僕のために」

「いいんですよ。武藤さんも根はいい人なんですが、生きてた頃の悪い癖ですぐにカッとなりますからね。まぁ、どうせ殴り合いができないので人に怪我をさせることもないのですが」

「あ、そういえばそうですよね」

「ちょっとセンセェ、こいつに余計な知恵をつかせねぇでくれよ。調子に乗っちまったらどうすんだ」

大げさに嘆いて見せるが、センセェは気にも留めねぇ。いつも穏やかだが、締めるところは締める。やっぱりセンセェには頭があがんねぇな。

「ところで武藤さん、今日はまた何のようですか?」

「ん、ああ。実はコイツがセンセェに聞きたいことがあるっていうから、はるばる連れてきたわけだよ」

「それはそれは。私に答えられることなら、喜んでお答えしますよ。遠慮なく聞いてください」

「あ、はい。あの、輪廻の仕方について教えてほしいんですが」

「輪廻…輪廻できなくて困っているのですか?」

意外そうな表情でセンセェが言う。

「そうなんだよセンセェ。こっち側は寂しくて嫌だとかごねてる割に、全然あっちに戻れねぇんだよ、この兄ちゃんは。いろんな奴に聞いてみたんだが、いいアイディアが浮かばなくてな。もうセンセェに聞くしかねぇと思って出張ってきたってわけだ」

「…」

「あの、日向さん?」

「ああ、すみません。ちょっと考え事をしていました」

センセェは何気ないように言ったが、そのしゃべり方に真剣さが隠れているのに気づいて、俺は奇妙に思った。今の会話ん中に、そんな真剣になる要素があったか?
と思ってる間に、センセェはゆっくり姿勢を正す。

「武藤さん、高橋さん。これも縁ですので、私の昔話でも聞きませんか?」

「え?え?」

「おいおい、急だなセンセェ。どうしたんだよ」

「昔話を通じて、高橋さんに知ってほしいことがあるのです」

「輪廻について知ってんなら、回りくどいことをしねぇでさっさと教えてやりゃいいのに。センセェらしくもねぇ」

「時には回りくどいことも必要なんですよ。聞いてくれますか、高橋さん?いえ、是非聞いて下さい。お願いします」

「あ、頭を下げないでくださいよ!僕が聞きに来たんですから!ぜひその話を聞かせて下さい!」

「ん~、なんだかよくわからねぇが、センセェの昔話には興味あるな。俺にも聞かせてくれよ」

「ありがとうございます。少し長くなりますが、聞いて下さい」





今回はここまでで終了である。本当はところどころ自分でツッコミを入れたい部分もあるのだが、最後にまとめて反省会をする予定。

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